ヒトラー『わが闘争』は、ドイツでは長らく、発禁。著作権はミュンヘン州が所有。
インターネット(アメリカなど)では、実際に、読めるようになっていた現実があっても、バイエルン州による出版禁止措置は続けられていた。
しかし、無批判的出版が非公然に行われる中、きちんとした批判的注釈付きの版を、学界などでの議論を踏まえて、出版することになった。
2016年、著作権を持つバイエルン州は、この本が、政治的宣伝・扇動に使われることのないように厳密に個々の叙述・言説と真実(研究の到達点に基づく真実)を照らし合わせる科学的校閲版を、出版した。
現在では、そのインターネット版(下記アドレス:オンライン版)が、ミュンヘン現代史研究所によって作成され、公開されている。
www.mein-kampf-edition.de
„Mein Kampf“ jetzt auch als Online-Fassung81%
... (IfZ) stellt seine kritische Edition von Hitlers Hetzschrift „Mein Kampf“ nun auch in einer kostenfreien Online-Fassung bereit. Unter www.mein-kampf-edition.de ist die im Januar 2016 veröffentlichte Printausgabe ab sofort auch komplett im Internet verfügbar. Unmittelbar nach Ablauf des Urheberrechts am ... fundierten Referenzpunkt entgegen und leisten damit politisch-historische Aufklärung im besten Sinne.“ Link zur Online-Edition: www.
このミュンヘン現代史研究所の歴史科学的な精密な調査を踏まえた『わが闘争』の出版を契機に、
『わが闘争』の歴史的評価をめぐる論争が活性化した。
その間の歴史的な評価の変遷に関して、書評(ヘルマン・グラーザーの著作の批判)を素材として概観した論文あり。
ヒトラーの『わが闘争』に示された基本的考え方(世界観)は、1920年代までに形成されたもので、
しかも、その基本は一貫しており、変化がないと、研究史(代表的にはイェッケル『ヒトラーの世界観』の把握)
では評価されている。
(リュトケの本へのかなり手厳しい書評の中でオーストリアの歴史家Mollのいうようにイェッケル説がこの50年間確認されてきた)。
ヒトラー『わが闘争』(一次史料)の基本的主張内容・主張の構造を、しっかり把握することが求められる。
(上記のモルが、イェッケルの本格的研究の流れを受け継ぐものとして評価するのは、
バーバラ・ツェーンプフェーニヒ『アドルフ・ヒトラー:わが闘争:世界観とプログラム』Till Kinzelの書評
Mein Kampfをめぐる研究書に関する書評(MGZ 76/1, 2017)
ヒトラーの人種主義・民族主義の独自性は何か?
これを確認できる第一級の史料・・・ヒトラーの『わが闘争』(Mein Kampf マイン・カンプフ)、
そして、出版されなかったが、『第二の書』(邦訳あり)・・・戦後発見されたもの。
『わが闘争』は、わが国を含め、世界の多くの国で翻訳されており、いつでも検証できる素材。
しかし、ドイツでは?
強烈な吸引力・宣伝力・「魅力」(!?)・・・したがって、ドイツでは戦後つい長い間、『我が闘争』の刊行は禁止。
2016、ミュンヘン現代史研究所の研究者が歴史科学的批判的検討を全面的に加え、膨大な注釈を付した『わが闘争』が、公式に出版された。
2冊で、2000ページ近い分厚い本。(総ページ1966ページ)
A4の大きさで、第一巻947ページ 二巻合わせて、 1966ページ
この現代史研究所版のタイトルは、『ヒトラー わが闘争 批判的編集版』
これに対し、アメリカやその他の国々の「出版の自由」のもとで、世界各国で翻訳され、読まれている。
日本では、角川文庫で、隠然たる「ベストセラー」と(改版編集者の表現)。
・・・誰が、読んでいるか?
最近有名なのは、インドにおける『我が闘争』の人気(?)・大量の印刷部数。
・・・・インドにおけるヒンドゥー至上主義・排外的ヒンドゥー民族主義の「バイブル」になっていると。